ストレージネットワーキング用のiSCSI
Storage Networking Industry Association及びSNIA IP Storage Forum白書
序文
Internet Protocol (IP)ネットワークが持つ偏在性、本来備わっているインテリジェンス、そして業界での情勢により、iSCSI (Internet SCSI)のようなIP ベースのストレージアクセス技術の開発が促進され、それらの製品が急速に市場に投入されています。様々なアプリケーションに対する顧客の要求により、iSCSI 及びFibreChannel デバイスを選択するという完璧なソリューションが登場したのです。IT管理者は、システム・インターフェースに関係なく、より多くのリソースを活用するためにストレージとシステムのネットワーク環境を管理、分割する機能を必要としています。このことは、共通のIP ネットワーク技術でのiSCSI とFibreChannel ストレージエリアネットワーク(SAN)の統合を余儀なくしています。
本書では、iSCSI SAN の配備について、及びiSCSI、Fibre Channel SAN の組み合わせと一般的なIP ネットワーク・テクノロジーを統合するための、3つのコンフィグレーション計画について検討しています。また、主要データセンター、遠隔データセンター、部門のワークグループにおけるiSCSI SAN の配備について例証し、そのアプリケーション、機能、そしてiSCSI とFibre Channel の混合IPベースのストレージ環境に備わる利点について検討しています。
ネットワーク化ストレージに関する予備知識
- SCSI
- 1980 年代初頭以来、Small Computer Systems Interface (SCSI)はサーバ間のブロックレベルのデータ転送を行うプロトコルとして台頭してきました。ガートナー/データクエストによると、それぞれのシステムに対して1億台ものSCSIベースのストレージ・デバイス(ディスク、磁気テープなど)が直接接続されています。
ストレージ・デバイスの配置が広範囲に広がっているにも関わらず、本来SCSIには接続できる距離および、デバイス数、そしてリカバリ能力には限界があります。
- Fibre Channel
- Fibre Channel には、高いパフォーマンス、接続性、ブロック指向のストレージ・プロトコルをサポートする機能が備わっているため、ストレージエリアネットワーク(SAN) を構築する際の主要な手段となっています。Fibre Channel プロトコルは、プロトコル処理の大部分をハードウェアに割り当てることにより、高いパフォーマンスを実現しています。Fibre Channel では、スイッチ型ネットワークファブリックインフラストラクチャを作ることにより、FC の操作距離を10-20km に拡張し、SCSI が抱えるいくつかの拡張性問題、さらにデバイス数の制限を克服しています。
- Network Attached Storage (NAS)
- NAS は、IPとEthernetに基づいてスケーラブルなファイルベースのストレージを既存のLocal Area Networks(LANs)に直接的に接続することを可能にし、これは容易なインストール、容易なメンテナンスを提供します。NAS デバイスはローカルのファイルシステム( NTFS、UFS など) をサポートします。ローカルのファイルシステムには、UNIX で利用されるNetwork File System (NFS)、Microsoft のWindows で利用されるCommon Interface File System (CIFS)などのFile Interchange プロトコルを使用しての遠隔アクセスが可能です。ファイルシステムはNASデバイスの内部、あるいは外部に位置するストレージ・デバイスのデータにアクセスします。これはSCSI あるいはFibre Channelにより相互接続されます。NASはブロックレベルではなく、ファイルレベルのアクセスを提供します。本書ではブロックレベルのアクセス方式に焦点を当てています。
- iSCSI
- iSCSI 規格が開発されるまでは、IPネットワークにおいてブロックレベルのデータをアクセスすることができませんでした。SCSIコマンドをカプセル化し、TCP/IP を使用して送信するiSCSIは、IP ネットワークにおいてホストシステム( イニシエータ) とストレージ・デバイス( ターゲット) 間の標準SCSIコマンドを交換することができます。
図1 はiSCSI イニシエータとターゲット・システム間でのデータ転送を表し、iSCSI の働きについて説明しています。iSCSI はシステム間のデータ交換を行う際、SCSI 規格のコマンドを使用することを覚えておいてください。以下で示されている通り、データはSCSIケーブル、あるいはFibre Channel ネットワークではなく、IP ネットワーク・インフラストラクチャによって転送されます。IP ネットワークを使用することにより、ローカルにも、大都市圏そしてワイドエリアのトポロジーにても、直ちにそのインフラストラク チャ上でのデータ転送が可能となります。

- iSCSI製品
- 現在、市場にはいくつかのiSCSI製品が出ています。下記の用語解説は、本書で使用される製品名の定義です。この用語解説には、IP ストレージに関する全ての専門用語が含まれている訳ではありません。
- iSCSIイニシエータ−iSCSI
- イニシエータは、ブロックレベルのデータ転送を要求するサーバーなどのデバイスであり、SCSI コマンドをIPネットワークで送信できるようにカプセル化します。イニシエータはiSCSIターゲット・デバイスとブロックレベルのデータを交換します。
- iSCSI ターゲット
- ターゲット・システムはiSCSI コマンドを受信し、IP ネットワーク及び、あるいはインターネットワーキング装置( 例、ストレージ・スイッチ、ルーター) を通じてデータを交換するストレージ・デバイスのことです( 例: 磁気テープ、ディスク、RAID)。
- iSCSI/Ethernetネットワーク・インターフェース・カード(NIC)
- iSCSI NIC はハードウェアのインターフェースではなく、システムソフトウェアで使用されるiSCSI、及びTCP/IP プロトコルをサポートする10/100、あるいはギガビットEthernet インターフェースのことです。現在、市場に出回る多くのiSCSI イニシエータとターゲットはiSCSI NIC をサポートし、iSCSI規格の実装をシステムソフトウェアにて稼働しています。
- iSCSI/Ethernetホスト・バス・アダプタ(HBA) 、ストレージNICs (sNIC)
- iSCSI HBA あるいはsNIC は、アダプタで走るiSCSI とTCP/IP プロトコルをサポートするGigabit Ethernet アダプタのことです。システムCPU のプロトコル処理をオフ-ローディングし、システムのオーバーヘッドを減らし高いパフォーマンスを提供します。
- iSCSI/IPストレージ・スイッチとルーター
- iSCSI/IP ストレージ・スイッチとルーターは、ストレージ・デバイスに対しiSCSI、及びFibre Channel を含むスイッチ型ファブリックの機能性を提供します。ISCSI とFibre Channel ポートを使用することにより、IP ストレージ・インターネットワーキング・デバイスはIP/Gigabit Ethernet スイッチング、Fibre Channel スイッチング、iSCSI からFibre Channel へのプロトコル変換などを行うことができます。このデュアル・プロトコル機能では、iSCSI とFibre Channel
デバイスを統合化IP ベースネットワークにプールすることができます。
統合型iSCSI とFibre Channelストレージ・ネットワークの利点
本書において概略が説明されている配備計画では、iSCSI とFibre Channel 接続デバイスに対する一般的なIP ストレージ・ネットワーク・テクノロジーは、以下のような機能と利点を提供します。
- 相互接続(iSCSI、Fibre Channel)に関係なく、IPネットワークを通じ全てのストレージにアクセス
- 既存のFibre Channel SANにアクセスし、IP環境への移動パスにアクセス
- 実証された性能のFibre Channelエンドシステムの使用、及びiSCSIサーバ用の安定性したハイエンドストレージ/SAN拡張の使用
- 発展的長期ストレージ戦略に対し、共通のIPネットワーク上でiSCSI SAN、Fibre Channel SAN、そしてNASリソースをプール
- ストレージの管理性を改善し、ストレージ・リソースの高い可用性を向上IPベースの中核SANファブリック
上記の環境をサポートするアプリケーションには以下があります。
- IPネットワーク上でのローカルおよび、リモート・バックアップ
- 異機種ストレージ・リソースの共通プールにおけるストレージの仮想化
- ピアツーピアのコピー
- 災害リカバリと高い可用性
- 異機種SANにおけるミラーリング
共通IP ネットワーク、あるいは共通IP テクノロジー?
IP ストレージ・ネットワーキングに関して度々問題とされる点は、共通のIP ネットワークのバックボーン内でストレージ・トラフィックとデータ・トラフィックを共有していることです。多くの人がこの実装がトラフィックの混雑を招くボトルネックとなっていると感じています。1 つのネットワーク上でメッセージとストレージのトラフィックを組み合わせることは可能ですが、実際にはIP ネットワーク・インフラストラクチャを分割し、ストレージとデータのトラフィックを異なるパスを使用して送信する方法が取られています。この方法により、顧客はIP ネットワーキングに対する投資を保護することができ、共通のインフラストラクチャで両方のタイプのトラフィックを移すことにより最大限の効率化が図れます。例えば、Virtual LANs (VLANs)のようによく使われる標準的な技術により、同じネットワーク装置の使用が可能となり、Ethernet ネットワークを別々のエンティティに区分けすることさえ可能です。
共通のネットワーク・テクノロジーの配備では、SAN、LAN、MAN、WAN から多くの物理的ネットワークが配備される際、基礎となるインフラストラクチャには、現存のIP ネットワーキング・スタッフの使用、統一されたネットワーク管理、そしてネットワーキング装置の共通ソーシングとメンテナンスが可能であるという利点があります。
ページの先頭へ